座右の銘は英国軍人Robert Baden-Powellの言葉Be Prepared「備えよ常に」
2018年の西日本豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震と度重なる災害をうけて防災事業緊急総点検を行い、実施結果について9月14日の会見で「災害は忘れる暇を与えず私たちを襲ってくる」と発言された。防災対策の重要性を都政として示し注力してきたから、2019年の台風15号、台風19号の被害拡大を押さえる事が出来たのではないだろうか? 2月25日、危機管理について小池百合子東京都知事にお話を伺った。
■昨年も災害が数多く発生しましたが、東京都はどのように対応されましたか?
昨年秋に上陸した台風は、各地に記録的な大雨や暴風をもたらしました。被災者の皆様は今も大変苦労されていると思います。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。都内では、特に15号と19号による大きな被害がありました。風速70メートルを記録した「かぜ台風」といわれた15号。台風の通り道となった島嶼地域では、電柱の倒壊や倒木による停電が相次ぎ、屋根も飛ばされるなど、「生まれてはじめての経験」と島の皆様はおっしゃっていました。かねてより取り組んできた無電柱化を加速していかなければなりません。一方19号は「あめ台風」で、都内初となる最大警戒レベル5の「大雨特別警報」が発表されました。多数の家屋が浸水し、河川の増水で道路が洗掘され、孤立する地域も発生しました。現場の状況をこの目で確かめながら、インフラの復旧、再建に向けた迅速な支援を行いました。
今回の台風で、都は、19年ぶりに災害対策本部を設置いたしました。この19年ぶりというのは、三宅島の噴火以来のことです。速やかに自衛隊へ災害派遣の要請を行わせていただきまして、全庁一丸となって対応をしました。孤立した地域に、水、食料、燃料など救援物資を自衛隊のヘリで運んでいただいています。また、奥多摩町には入浴支援もしていただいたということで、地域の方々もさぞかし安心をして、また癒やしにもつながったかと思います。
私は、阪神大震災を経験しております。自衛隊の皆さんの救出・救助活動、復旧活動への貢献は忘れることができません。あのときも被災地では自衛隊のお風呂が大変な人気でした。多くの方がいまだに感謝し続けています。安心・安全を守っていく自衛隊の皆さんには、本当にいつもお世話になっています。
■災害対応に関して、今後どのように取り組まれますか?
最近は、災害が激甚化し、そして頻発化しているというのが最大の問題です。これまでの常識に囚われることなく、為し得る限りの備えを固めなければなりません。防災対策の見直しも必要です。例えば大雨のときにどれぐらいの雨量を想定するかによってインフラを変える必要があります。これまで、区部で時間65ミリ、市町村などでは時間55ミリの降雨への対応をしてきました。この雨量の想定を高めて、75ミリと65ミリに整備水準を引き上げております。インフラの能力、容量を変えることによって、豪雨に対応していきます。
また、昨年、一昨年もそうですが、災害のたびに防災対策の課題を見直しております。それが、「やはりここも足りないね」「もっとこうすれば良かった」というような課題の洗い出しにつながります。昨年はこれらの台風被害を踏まえて見直しを行い、都有施設を避難先として活用することや、一時滞在施設に充電環境を整備することなど、35の対策を取りまとめました。これらの対策は令和2年度予算に盛り込んでおり、速やかに実施していきます。
それから、災害対応力の強化という点では、防災訓練をしっかりと行い、大規模災害時の対応に慣れていくということも必要です。都は、毎年自衛隊と連携して図上訓練を行い、例えば首都直下地震発生後72時間以内に何ができるかなどもシミュレーションをしています。これらは防災力、防災対応力の強化に必ずつながっていると確信しています。
(写真左:2019年10月16日、西多摩郡奥多摩町日原地区の「命の道路」洗掘現場を視察。写真提供:東京都、表:東京都HPより引用)
■コロナウイルスについて、どのように今後取り組んでいかれるかということについてお聞かせ下さい。
1日も早くこの事態が終息し、再びみんなで当たり前の日常を取り戻せますよう、皆様のご協力が必要です。大変深刻な危険性をはらんでいる「見えざる敵」との闘いに、総力を挙げて対応しなければなりません。東京はこれだけの大都市であって、そして人々の経済活動、通勤通学、何百万の人が動く街です。都内においては、感染源や感染経路が判明していない症例が増えてきています。
国内、都内での感染拡大を防ぐためには、感染の機会を減らすこと、特に感染者が一度に多くの人を感染させる機会を減らす社会的な取組が重要であります。かねてから東京2020大会時の交通混雑緩和に向けて取り組んできた、「スムーズビズ」(テレワーク、時差出勤)は新型ウイルス対策でも有効であり、前倒しの推進を業界団体、企業に働きかけています。先ずは隗より始めよで、都庁では、窓口業務を除く全職員がテレワーク、オフピーク出勤を進めています。また、イベントの開催に伴う感染の拡大を防ぎ、感染者の増加を可能な限り抑制していく観点、マスギャザリングという観点から、都の施設を閉めるとともに、都主催イベントの規模を縮小したり、中止するなどの措置を講じております。そのために、例えば3月1日に予定しておりました東京マラソン。3万8000人の一般ランナーの皆様は、くじに当たって楽しみにして練習を重ねておられましたが、今回ご遠慮いただいて、その代わり来年エントリーしていただけるような、対応に変えさせていただきました。
もちろん、ウイルスに対しての医療体制の確保、都内の感染拡大防止策の徹底を図っているところであります。すでに都議会に提案しておりますが、今年度と令和2年度とを合わせた13カ月予算ということで401億円の補正予算を計上しました。今回のウイルス対策用の感染症に必要な、例えば隔離が出来る病床の確保。陰圧機能を有する特殊救急車の増備。検査態勢の拡充。新型コロナウイルス感染症対策サイトを開設。などなど様々な対策を盛り込んでおります。
また、経済活動においては、中国が震源地になってコロナウイルス不況となり、世界の工場といわれる中国での生産がストップしています。この状況は、必ず日本の、東京都内の経済活動に大いなる支障をもたらすことになることが予想されます。そのため、中小企業などに金融支援ができるよう、融資総額でいうと1000億円に匹敵する安全ネット、セーフティーネットをすでに敷いたところです。
危機管理は起こることを想定して、それに対してハード・ソフト両面で準備をしておくこと。東京都としてしっかりと危機管理に取り組み、都民の命を守り、健康を守り、そして経済を守ってまいります。
(写真:2020年3月4日、経団連会館にて一般社団法人 日本経済団体連合会 中西宏明会長に新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて「スムーズビズ」の取り組み等を一層推進するよう要請。写真提供 一般社団法人 日本経済団体連合会)
■自衛隊隊員の皆様にエールをお願いします。
防衛大臣を務めたということもありますけれども、練馬では銃剣道の会長をさせていただいたり、それから自衛隊体育学校の応援団として、またバレーボールの会長を務めていたりとか、いろんな面で自衛隊とは今もつながっております。
自衛隊は、国の守りの一番の要です。あらゆる事態に即応する自衛隊への期待と重要性は、さらに増してきているのではないか。これは自然災害のみならず、国家としての安全保障が今大きく変わりつつあるところで、自衛隊の使命は一義的には国防ということなので、まさにその部分でしっかり取り組んでもらいたいと思います。それが第一であります。自衛隊に対して、都民、国民は大きな信頼を抱いています。これからも自衛隊の皆さんが、自分が国を守っていくんだというプライドを胸に、日々の訓練にさらに精進していただきたいと思います。
東京都知事 小池百合子 プロフィール
東京都知事
小池百合子
こいけゆりこ
出身地:兵庫県
昭和27年7月15日生(67歳)
昭和51年10月 カイロ大学文学部社会学科卒業
平成4年7月 参議院議員
平成5年7月 衆議院議員
平成15年9月 環境大臣
平成16年9月 内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)兼任
平成18年9月 内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)
平成19年7月 防衛大臣
平成22年9月 自民党総務会長
平成23年10月 予算委員会理事
平成28年7月 東京都知事 当選
(写真提供 東京都)
東京都知事 小池百合子 スペシャルインタビュー 東京都知事 小池百合子
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