迎撃不可能? 極超音速ミサイル兵器時代が到来。
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一般社団法人DSC
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アメリカ・ロシア・中国・北朝鮮が、次々と極超音速ミサイルの開発や配備を発表!
2021年に入り、マッハ5以上で飛行するハイパーソニック・ウエポン「極超音速ミサイル」の開発、試射、配備といった話題が軍事関連のニュースを賑わしている。先日、北朝鮮が日本海に向けて発射実験を行ったミサイルも、この極超音速ミサイルであることが判明している。
そして、ロシアや中国が開発しているこのミサイルには核弾頭が搭載可能であり、アメリカは核弾頭の搭載はないものと言われている。さらに音速以下の巡航型ミサイルと比較して、標的をはるかに迅速に打撃できるという。
万一、この最新鋭のミサイルに狙われたら、現在のいかなるミサイル防衛システムでも撃墜することはほぼ不可能と言われているのである。
では、この極超音速ミサイルに関して各国の開発段階を整理してみることにする。
もともと米国は、2010年4月にファルコン「HTV-2」の飛行テストに成功するなど極超音速兵器の開発でロシア・中国を凌駕していたが、これまで極超音速兵器の取得を目指さなかった。
その理由は、米国はロシア・中国と異なり、極超音速兵器に核弾頭を搭載しないとしている。そのため、爆撃効果が小さい通常型極超音速兵器の必要性・有効性に関して議会などで議論がなされてきたためである。ところが、ロシアや中国の最近の極超音速兵器がもたらす戦略的脅威の増大を受け、米国防総省と米議会は、極超音速兵器システムの開発および、今後短期間に配備することに強い関心を示すこととなったのである。
ロシアはいち早く極超音速ミサイル発射実験に成功し、プーチン氏誕生日に公表。
2020年10月6日、ロシアは極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」の発射実験をバレンツ海で成功させた。ワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長がプーチン大統領の68歳の誕生日に当たる7日、テレビ会議を通じて大統領に報告。参謀総長によると、白海に展開するアドミラル・ゴルシコフ級艦船から発射実験を行ったとされ、プーチン大統領は、これまで以上に北極圏でロシア軍の存在を高めると表明している。
さらにロシアは、2021年6月末からNATO(北大西洋条約機構)が黒海で行っている軍事演習に対抗するように、7月19日にロシアが戦艦や潜水艦への搭載を検討している極超音速兵器の試験発射を成功させて見せたのである。
中国では、人民解放軍が台湾に近い中国南東部の沿岸に極超音速ミサイル「東風17」を配備。
香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙は2020年10月18日、台湾海峡を挟んで中国と台湾がにらみ合うなか、中国の人民解放軍が台湾に近い中国南東部の沿岸に極超音速ミサイル「東風17」を配備したと報じた。それは、中国で最も高性能の極超音速ミサイルで、最長で約2500キロの射程距離を持つという。しかし、台湾海峡は幅160キロほどしかなく無意味との声もあったが、それは「人民解放軍の作戦中に台湾問題に武力介入を企てようとするより強力な敵勢力、および中国の主権と領土の保全を脅かすその他の脅威を想定してのことだ。」と報じられ、想定される「敵勢力」とは台湾政府を支援しようとする米軍だろうと予想されている。
アメリカは、2021年4月・極超音速ミサイルの空中発射実験に失敗するも、9月に成功!
アメリカでは、艦船や地上、空中プラットフォームに搭載する極超音速の通常兵器を重視しており、極超音速兵器は空気取り入れ型と、上昇後に滑空するタイプの2種類に大別して開発されている。米国防総省によれば、最終的に、実際の軍事攻撃の場面で音速の20倍を出せる極超音速ミサイルを開発したい考えだという。これはスペースシャトルが大気圏に再突入するスピードと比較してもそれほど劣らない。
米空軍は2021年4月5日、開発中の極超音速ミサイルをB52H爆撃機から空中発射する実験を行ったものの、発射に失敗したことを発表。しかしながら、極超音速ミサイルはスピードが極めて速く、長距離飛行して厳重防御された空域を迅速にかいくぐり、迎撃される前に港湾や飛行場などの目標を攻撃できるメリットがあるとし、米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は、5か月後の9月27日、外気吸入型極超音速巡航ミサイル(HAWC)の飛行実験に遂に成功したと発表した。
HAWCの空中発射は、ミサイルは音速の5倍以上の速度に到達。DARPAは声明で「極超音速巡航ミサイルが米軍にとって非常に効果的な兵器になり得る能力を示した。」と強調した。
ちなみにこのミサイルが、1時間に6200km飛行することも明らかにしたのである。
北朝鮮では、新たに開発した極超音速ミサイル「火星8型」を試験発射したと発表。
先日、日本でも話題になったが、2021年9月28日に北朝鮮が日本海に向けて発射した飛翔体の正体は、この極超音速ミサイルであったことが判明した。
朝鮮中央放送はミサイルを試験発射した翌日29日、「国防科学院は28日午前、慈江道龍林郡都陽里(チャガンド・ヨンリムグン・ドヤンリ)で、新しく開発した極超音速ミサイル火星8型の試験発射を進行した。」と報じたのだ。
放送は「初の試験発射」とし「国防科学者は能動区間でミサイルの飛行操縦性と安全性を確証し、分離した極超音速滑空飛行戦闘部の誘導機動性と滑空飛行特性をはじめとする技術的指標を確証した。」と説明した。続いて「初めて導入したアンプル化されたミサイル燃料系統と発動機の安定性を確証した。」とし「試験の結果、目的としたすべての技術的指標が設計上の要求を満たした。」と伝えた。
問題は、日本の近隣諸国での極超音速ミサイル開発が活発化する中、どういった国防政策をとるのかということに尽きるだろう。産声を上げたばかりの第100代・岸田新政権は、衆議院選挙を間近に控えながら、早速この問題にも的確な手腕を発揮できるのか? 国民の期待に応えて欲しいものである。
参考:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62940
極超音速ミサイル開発 極超音速 ミサイル
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