防衛副大臣 衆議院議員 中山泰秀 × 外務副大臣 参議院議員 宇都隆史【自衛隊応援クラブ第31号】
会報誌
一般社団法人DSC
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中山:しっかりと相手に自国の意見を闘わせ理解を得る。自衛隊は命令あれば使命感で対応しています。
〈中山泰秀 防衛副大臣 プロフィール〉
昭和45年10月14日生
出身地:大阪府
平成19年8月 外務大臣政務官(安倍内閣、福田内閣~平成20年8月)
平成22年3月 早稲田大学大学院 卒業(修士)
平成26年9月 外務副大臣(第2次安倍改造内閣)
平成26年12月 外務副大臣(第3次安倍改造内閣)
平成27年1月 シリアにおける邦人拘束事案に関する(現地の活動を指揮する)現地対策本部長
平成28年1月 衆議院 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会筆頭理事、外務委員会理事
平成29年11月 衆議院 外務委員会委員長
平成30年10月 衆議院 国会対策委員会副委員長
令和2年9月 防衛副大臣兼内閣府副大臣(菅内閣)
宇都:自衛官の環境をよくする事は政治家の仕事。国益のために働く在外邦人にワクチン接種の機会を!
〈宇都隆史 外務副大臣 プロフィール〉
昭和49年11月12日生
出身地:鹿児島県
平成10年3月 防衛大学校(第42期)卒業(理工学部航空宇宙工学科)
平成10年4月 航空自衛隊入隊
三沢基地、稚内分屯基地、春日基地にて勤務
平成19年3月 航空自衛隊退職
平成26年9月 外務大臣政務官(第2次安倍改造内閣)
平成26年12月 外務大臣政務官(第3次安倍内閣)
平成28年7月 第24回参議院議員選挙にて2期目当選
平成28年9月 参議院外交防衛委員長
平成29年9月 参議院予算委員会理事
平成30年11月 参議院外交防衛委員会筆頭理事
令和2年9月 外務副大臣(菅内閣)
防衛副大臣・中山泰秀衆議院議員と元航空自衛官で外務副大臣の宇都隆史参議院議員の対談が実現した。新型コロナウイルスワクチンの接種ができる環境をより広範囲の国民に提供するため、自衛隊大規模接種センター設置について大規模接種対策本部長として陣頭指揮を執る中山副大臣と自衛隊の現場を身をもって経験した宇都副大臣に、先鋭化かつ顕在化する総合安全保障問題について防衛問題研究家の桜林美佐がお話を伺った。
——コロナウイルスについて、自衛隊は大規模接種センターを運営しております。現場の様子をお聞かせください。
中山:4月25日からスタートしました東京と大阪の大規模接種センターでは、現場自衛官の士気は高く、しっかりと与えられた3ヶ月の任務を完遂したいと思います。日本国としての集団免疫を出来るだけ早期に獲得していくため、国が直轄組織である自衛隊を動員し、市区町村の接種を力強くバックアップさせていただいています。
現場では、被接種者を笑顔できっちりとお迎えし、そして最後には「安心」をお持ち帰りいただけるよう、精一杯尽力しています。防衛省大規模接種センターでは、心と体の安心を提供できます。現場の自衛官皆さんの素晴らしさであると同時に、民間の役務提供者も同様に頑張って下さっています。防衛省自衛隊と民間の初コラボ。そして何よりもご協力いただいている国民皆様に対し、本当に感謝しています。どうもありがとうございます。医官、看護官のみなさんは、それぞれの所属部隊から東京と大阪の大規模接種センターに来ていただいています。これから自然災害など多く発生する時節を迎えますので、20万を超える自衛官にも早く接種をしてもらいたいという御要望もいただいております。私としては、この3ヶ月の任務を完遂し、医官・看護官の方々に出来るだけ早い段階で所属部隊に復帰していただいて、それぞれの駐屯地・基地で自衛官に速やかな接種を行なっていただきたいと思います。国民皆様のご協力のおかげで、両センターとも円滑に運営できております。現場を訪れ、現場の士気を確認し、運営状況に気を配っています。
宇都:ワクチン接種は、本来は地方自治体の役割であり、大規模接種センター設置が検討された当時は「そこまで自衛隊にやらせるのか」と自民党内にも異論がありました。しかし実際にやってみたら、私のまわりでも大規模接種センターに行かれた方がいるんですけど、極めて評価が高いですね。自衛隊の洗練された安全かつ効率的にやられている姿を見て、やっぱりやって良かったと思いました。
中山:最初に感謝のお手紙を頂いたのは、大阪の接種会場でした。民間の方が、御自身の命を防衛省・自衛隊という組織が守っているんだということを、こういったワクチン接種の機会に感じていただけるというのは、非常にありがたいことだと思います。大規模接種センターは防衛省・自衛隊の医療施設のひとつでもありますので、毎朝きちっと国旗掲揚も行なっておりまして、わたしがFacebookでライブ中継をさせていただきましたら、「ここまでやってらっしゃるんですか」と励ましのお言葉をいただきました。
実は今回、防衛省・自衛隊としては初のミッションであるということと、民間の役務提供者の皆さんも御協力いただいているということ、あとは民間の看護師、民間と自衛隊のコラボレーションとしても、新たな取り組みだと思います。これから人口減少が顕著になってくる時代に、自衛隊ですら93%の充足率ですよね。そのなかで、防疫の作業ですけど、民間とのコラボができたということは、今後の安全保障を考えると大きな礎となったのではないかと思います。
(画像は、防衛省・自衛隊Twitterより)
——外交官や海外に派遣される要員、あるいは在日米軍の方たちの接種の状況は?
宇都:外務省ではそれを問題視しています。国内ではどうしても年齢を基準に、重症化したときの死亡リスクが高い高齢者から接種を始めています。それはひとつの大事なファクターなんですが、一方で仕事の内容的にリスクの高い方をどのようにケアするのか。先ほど防衛副大臣も言われたように、これから災害派遣に従事する自衛官、海外でコロナが蔓延している所へ国の命令で送り出す職員、そういう方々へのワクチン接種について、議論もされずにいた時期があったんですね。これは本当に急がなければならないという認識で党内でも議論していただいて、海外へ送り出すPKOの自衛官もそうですし、各省から大使館・領事館に送り出している外交官の方々も、6月21日から職域接種が始まり、接種が終わった方から送り出していくことになりました。ただ、やはり米軍と比べると動きが遅かった。米軍はゴールデンウィークが終わったあたりには隊員への1回目のワクチン接種があらかた終わっているという状況でしたので、やはり危機管理のあるべき姿というのは、もう一度学び直さなければならないと思いました。
中山:先に述べた通り、今回のセンター運営もそうなんですが、基本的には防衛省自衛隊だけでやっているものではなくて、内閣官房が主幹の形になって、厚生労働省はワクチンの供給、総務省は市区村町との調整、防衛省自衛隊としては供給されたワクチンを管理しながら接種を進めるという形で役割が分担されています。そのなかで河野大臣がおっしゃっているように医官、看護官の方から優先的にやっている状況です。そして優先接種というのもやってまして、これは自身で体温を測りどんな症状が出たかなどについて、一定の日数の健康観察記録をつけなければならない。私もその枠で第1回目の接種を終えたところでして、そういった責任のともなう範囲内での接種というのもあります。
そしてなにより防衛省自衛隊の特筆すべき素晴らしいところは、自分のことは差し置いてでも、多くの国民の皆さんに1本でも多く、1日でも早くワクチンを届けたいという気持ちがある点です。その気持ちを理解した上で、自衛官がこれから災害派遣の準備を進めるなかで、助ける側が助けられる側に回ってはいけないと「自衛官が先に接種したらどうか」という声を上げていただけたというのは、非常にありがたく、感謝を申し上げたいと思います。
宇都:自衛官が優先的にワクチンを接種することには、もうひとつ重要な意味があると思っています。在日米軍の皆さんはほとんどの方が接種を済ませておられるんですね。そして、日本を守るための在日米軍との共同演習をするとなったとき、片や自衛隊は接種が済んでいない、片や米軍は済んでいるとなると、米軍から「接種を済ませてから来てくれ」という声が必ず出てくるでしょう。そうなると、国内の災害派遣だけの話ではなくて、日本を守るための各国の軍隊との連携にも支障をきたしますよね。ですからぜひとも早く接種していただきたいと考えます。
——G7サミットでの五輪。「勇気を与えるための、国としての意思」
宇都:G7における日本外交のひとつの大きな成果だったと思います。国内の有権者のなかには、コロナに対する不安から、開催に懐疑的な方がたくさんいらっしゃいます。ただ、いつまでもコロナに引きずられて、世界の連携や人と物の移動を止めておくわけにはいかないんです。どこかの国が先鞭を切って、国をまたいだ大きなイベントを成功裏の元に実現する。きっとそのなかで、ひとつの国際的なルールも生まれてくると思いますし、この基準であれば水際をきちんと管理しつつ、人が移動していいよという状態にしてあげないと、航空産業などは潰れていきます。航空産業はモノづくりの産業のなかでは宇宙産業と同じ最先端ですから、航空産業が潰れるということは、今後のモノづくりにとってものすごいマイナスなんです。こういった大義も五輪にはあり、それを皆さんに御理解していただきたい。世界中の皆さんが「五輪に行きたいから」というような個人的な発想ではないんですよ。コロナを克服したひとつのレガシーを作りたい。それによって人の往来が出てくれば、観光業の芽がもう一度出てくる。もちろんいきなりバンっとはならないにしても、誰かがやらないと。やってくれる国を待つ側に廻るのか、ホスト国として我々こそがそれを実現する旗手になるのか。絶対に中国の北京五輪であってはならないのです。日本がぜひ旗を振って、それを実現させてみてほしい。各国が意思表明をした上で、なんとか日本が成功させるということは非常に重要だと思っています。
中山:防衛省・自衛隊からも選手が出場予定なんですね。文化や芸術、学問、スポーツというのは、人々に感動や知識を与え、連帯感を共有できる非常にすばらしい機会だと思うんです。物事というのは、なにかをやろうとすると、必ず賛成と反対があります。それから、物事には必ず順番があります。本来は2020年が日本の順番だったんですね。もし日本が東京五輪をスキップすると、次は中国がその役割を担うことになります。IOCの皆さんがここまで応援をしてくださっていて、国内でも賛否両論ありますけれども、ウイルスに打ち克つということ、そして世界と連帯することを前提として、五輪の祭典が東京で行なわれ、日本はしっかりコロナに打ち克っているということを国際社会に理解していただく一番いい機会だと思っています。これが文化の力、スポーツの力であり、そして障害のあるアスリートの方も、この日のためにどれだけ涙を飲んで練習してこられたか、アスリートの方に思いを馳せていただくと、私は、かれらの努力を無駄にしてはならないと思います。
ただし、五輪開催と人の命を天秤に計ればどちらが重いか? 命が重いに決まってます。だからこそ、平和で安心な環境で開催できるように菅総理もイニシアチブを取って頑張っているわけです。今回のコロナで日本の対策が遅かったとか色々な批判もありますが、他方、世界の数字を見比べると、日本は死者の数でも、先進国や人口密度を考えると、相当頑張っているほうだと思います。例えば玄関で履物をぬぐなど、日本の確立された公衆衛生の概念については、あらためて御先祖様に感謝しないといけませんね。そういったことを含めて、日本独特のいろんな知恵とか文化から織りなされているものは、安全保障にも広がりがあるのではないかと。ぜひ、日本の防衛省・自衛隊の考えかたというのが、これからも日本文化を生業に世界中に花を開いて行ける、そういった安全保障政策というものを、防衛と外務の縦割りを打破しながら、既成概念にとらわれずに前進できればと強く思います。
——防衛政策で一番気になる、募集の問題。
中山:福利厚生というのが一番大事だと思います。防衛予算を見たときに、約5兆円あるとして、50%は人件費、サラリーなんです。ですから残りの2.5兆円が、装備等であるわけですが、世界の軍事予算とか国防費と比較するときに、半分人件費なんだという視点を忘れずに比較をしていかなければならないと常に思います。アメリカ合衆国の軍隊が兵士に対して行なっている福利厚生、日本の防衛省・自衛隊が自衛官に対して行なっている福利厚生、これを理想的な形に近づけていってあげたいという思いが、私は非常に強いです。仮にアメリカのロールモデルがめざすべき福利厚生の最高レベルだとすれば、日本はそこにはまだ至らないということだと思います。
(画像は4月12日三沢基地視察時に撮影(宇都隆史事務所提供))
——親御さんが「近くにいてほしい」と言うから。
宇都:いまは少子化の時代ですから、自分がいないと親が不安等、世の中の環境が変わってきているものですから、転勤の少ない海上保安庁、警察、消防は人気があるんですけど、全国転勤を前提とした人事体制っていうのも、少し考え直す余地はあると思います。それと、やっぱりキャリアパスなのかなと。自衛隊は若年定年制を敷いていますから、定年の年齢が伸びたとはいえ、50代で皆さん辞めていくんですよね。辞めてから再就職して、色々なことをやっていく。あるいは任期制の隊員さんだと、何期か務めてから次の仕事を探さなければならない。たとえば米軍を例にすると、軍人をしながら防衛産業に出向している間、軍人という立場を保ったままで出向することができるんです。その間は軍から給料をもらわずに会社から給料をもらうんですけど、制服を着たままで会社の一メンバーとして開発とか研究に携わったり、何年かしてまた軍に帰ってきたりする。そういうのを繰り返すことができると、ある意味、退職したときに民間の会社の雰囲気がわかっていますし、再就職もすんなりいく。自分のキャリアパスとしても流れができるわけです。日本の場合、自衛官は特別職国家公務員で兼職は禁止ですから、アメリカと同じようにはいきません。働き方改革をいろいろやっている昨今のなかで、公務員の働きかたはどうあるべきなんでしょう。これは自衛官だけの問題ではないと思うんですけど、全体を見直していかないと、これから10年、20年が経ったときに本当に23万人の自衛官を確保できるのかっていうことを、国家として真剣に考えなきゃいけないですよね。
——現場をご覧になった率直な感想をお聞かせください。
中山:使命感を持って、無我夢中で国を、国民を守ることを考えてくれているなということを、感謝と敬意を持って認識しています。シビリアンコントロールの世界ですけれども、現場の防衛省自衛隊の一人ひとりがきっちりと認識してくださっているなかで、それぞれの与えられた業務に専念してくださっている。これが私たち国民ひとりひとりの喜びであって感謝すべきところだと、ものすごく思います。災害とか、そういった場面でしか感じることができない国民の皆さんが多いと思うんです。今回の大規模接種センターに来て初めて防衛省の人と会ったとかいう方もおられるかもしれません。その皆さんが会ってくれたごく普通の自衛官の方が、いざというときは皆さんの命を守ってくれる武人であるということをきちっと認識していただいていると思います。本当に安全保障環境が不安定になってきているなかで、台湾でも一触即発があるかもしれないと米側が予測しているなかで、あらためて私たち国民自身が自国の防衛というものを考えるにあたって、同じ日本人が、武人がいてくれるという認識をきちんと持てるか。それを持たせてくれる、そしてわれわれの期待に応えてくれる方々の集団が、自衛隊、防衛省の職員、隊員の皆さんだと思っております。
宇都:サムライジャパンという言葉があるじゃないですか。私は、サムライという言葉を現代で本当に使って良いのは、まさに自衛官を含めた、公的に危険な職業に就く人たちだけだと思っているんです。ある意味、自己犠牲の下に公の利益のために全力を尽くす人たち。そのなかで自衛官は仁義礼智信という道徳の体現を日々自分に課している存在で、しかも組織のなかでそういう若者を育てていこうという教育力が凄まじいですよね。昨日まで本当に普通に渋谷を歩いていたような男の子が、3ヶ月の教育隊の訓練で背筋の一本とおった本物の日本のサムライになっていく瞬間を見るにつけ、感動もしますし、私から見たら後輩になるんですけど、一国民としては本当に尊敬します。
退官される自衛官の方が、本当にほっとした顔をして退官されるのが、いつも感動的なんです。自分の現職時代に自分のせいで大きなミスをしなくて良かった、あるいは紛争になって自分の力を発揮できずに国を守れないというような瞬間に立ち会うことがなくて良かったという顔です。あのほっとして辞めていく瞬間を見るにつけ、この人たちは40年近くどんな気持ちで制服を着続けていたのだろうと思うと、もっと一般の我々が、国を守るということに対して自分達ができない分、隊員の皆さんをサポートしてしかるべきなんだろうな。いろんな支え方があっていいと思うんですけどね。本当に素晴らしい組織だなあと思いますし、本当に隊員の皆さんには引き続き頑張っていただきたいと思っています。
防衛副大臣 衆議院議員 中山泰秀 × 外務副大臣 参議院議員 宇都隆史 宇都隆史 中山泰秀
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